アイドルアルティメイト・決勝大会当日、PM01:00――――。
会場・幕張メッセ特設会場には、既に延べ5000人を越える観客が。
そして、客席の一番前には、10人の審査員の姿があった。
日本全国のアイドルの頂点を決める、アイドル・アルティメイト・ファイナル、いよいよ、開幕――――!
会場の電気が消え、しばらくして会場全体にスポットライトが走る…!
同時にドラムロールが流れ、そして―――!
「Ladies and Gentlemen!!」
『Welcome to “IDOL ULTIMATE”Final Stage!!!』
バァ――――ンッ!!!
―――キャアアアァァァァァ!!!!
巨大クラッカーが音を立て、黄色い歓声が響き渡り、ついに最後の舞台の幕が開いた…!
「皆さん、こんにちわ!!!!」
まず最初に現れたのは、今回の決勝大会の司会及び進行役を勤める、この2人。
「“アイドル・アルティメイト”ファイナルへようこそ!私、今回の司会進行を勤めさせていただきます、照英です!よろしくお願いします!」
「はい、そして同じく、司会を勤めさせていただきます、“マッキー”こと西山茉希です!よろしくお願いしま〜す!」
5000人の観客が、2人の登場を声援で迎えた。
「いやぁ、マッキー、今日はすごい熱気だね!」
「ホントね、見ているこっちが圧倒されそう。」
「はい、今回のIUファイナルは、ここ、幕張メッセ特設ステージから、生放送でお届けしていこうと思います!」
この決勝ステージは、なんと生放送!
会場のお客さんだけでなく、テレビを通じて今回のライブの行く末を見守るのだ。
「そしてですねマッキー。実は今回、このファイナルを盛り上げるために、スペシャルな3人組が駆けつけてくれているんだよね!?」
「そうなんです、それでは、折角なので歌っていただきましょう!人気アイドルグループ“M-ist(ミスト)”の3人で〜す!!!」
『勇気は時を越える』のイントロと共に、サプライズゲストとして登場した、M-istこと、武田聖夜(たけだ・のえる)、島田翼(しまだ・つばさ)、田中理来(たなか・りく)の3人。
「どうも、こんにちわ〜!!!」
聖夜のさわやかな声に、観客も笑顔の声援で答える。
そして、挨拶代わりにオープニングを盛り上げるために3人のパフォーマンスを披露し、会場を盛り上げた。
曲が終わると、3人は照英とマッキーのところに寄った。
「ありがとう3人とも。どうだい、実際にこうやって大人数の前で歌を披露するのって。」
「俺たちとしても非常に初めてだったんで、うまく行くかどうか心配だったんですが、盛り上げることが出来てよかったです!」
彼ら3人には、最終ステージ限定の特別審査員として、今回のファイナルステージの行く末を最後まで見届けてもらうために招かれたのだ。
「いいかい3人とも、今回の審査はとても難しいと思うけど、厳し〜く、見てやってね。」
「わかってますって。あ、ところで照英さん、マッキーさん、今回決勝に残った6名、色んな意味で凄いことになっているって話を聞いたんですけど。」
その話題が振られ、いよいよ本題に差し掛かった。
「そうなんだよ!今回の決勝ステージは想像を絶するぞ!」
「それでは早速、VTRと共に今回のファイナリスト6名にご登場いただきたいと思います、どうぞ!」
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アイドル・アルティメイト――――。
それは、真のトップアイドルを目指す女の子たちの、熾烈な戦い。
今年、そのIUの歴史に、新たな風が吹き荒れる!
今年度の応募総数は、ビデオメール込みでなんと、2897通!
そこから、書類選考、ビデオ審査を経て、数回に分けて繰り広げられた過酷な予選と、準々決勝、準決勝という本選を経て、この決勝大会へと勝ち上がったのは――――。
僅かに6名!!!
それでは、決勝大会に進んだ6名を紹介しよう―――。
頭角を見せつつある期待の新星!765プロダクションからは―――!
・太陽のような明るい笑顔を武器に、高みを目指す元気印――天海春香!
・クールな性格と美しい歌声で見る人を魅了する青き翼――如月千早!
・内気な性格を変えるために、真の強き心を求める少女――萩原雪歩!
いずれも現役のトップアイドルに負けず劣らずの能力の持ち主。
ボーカル系とダンス系のレベルが大きい彼女たちは、その高い歌唱力と優雅な踊りで、ファンの心をがっちり掴めるか!?
それに対するは、実力伯仲の屈指の強豪!961プロダクション所属のこの3名―――!
・魅力的なプロポーションを武器に、相手の心を釘付けにする――星井美希!
・琉球の風を身に纏う、沖縄出身のダンス系アイドル――我那覇響!
・やわらかな月の光を背負う、お嬢様気質の北欧系クォーター――四条貴音!
961プロ自慢の3人組『Project Fairy』がIUファイナルに揃い踏み!
どのジャンルにおいても無類の強さを誇る彼女たちが、やはりアイドル界の頂点に君臨するのだろうか!?
いざ、アイドルの頂点を目指すべく、最後の一騎打ち!
その運命を決め、結末を見届けるのは君たちだ!
アイドル・アルティメイト・ファイナル
765プロ VS 961プロ 天下分け目の大聖戦!!!
運命のゴングが鳴る!!!!
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VTRの映像と並行して、ナレーションの紹介と共に登場した6人のアイドルが、観客の拍手と熱い声援に出迎えられる。
時折聴こえてくる声援に対して手を振るのも忘れない。
「はい、なんとこの決勝大会は765プロのアイドル3人と961プロのアイドル3人がその雌雄を決すると言うわけで…、どうなるか非常に楽しみですね!」
「そうですね、ミストとしてはいかがですか?」
「同じアイドルとして、最後の最後までどうなるか分かりませんし、この後の彼女たちのパフォーマンス、俺たちとしてもとても楽しみです!」
「彼女たちのファンの一人として、結末まで見届けさせていただきたいと思います!」
「ぜひとも最後まで楽しんでいただきたいと思います!さぁ、それではここで今回のアイドル・アルティメイト・ファイナル、ルールを説明させていただきます!」
☆アイドルアルティメイト・ファイナル ルール説明
・決勝戦は、フリーパフォーマンス対決
・ファイナリスト6名は、それぞれの楽曲を一曲ずつ披露してもらう
・披露する楽曲は、カバー曲、オリジナル曲、一切問わない
・6人の全てのパフォーマンスが終了した後、会場のお客様5000人+審査員&M-istによる最終投票を行う
・最終的に、最も多い獲得票を得たアイドルが、今大会の優勝者となる
公平を喫するために、くじ引きで順番を決定する。
その結果―――。
1.千早、2.美希、3.貴音、4.雪歩、5.響、6.春香
と言う順番となった。
(うぅ〜…、わたしが一番最後か…、一番緊張してきた〜。)
最後と言うことはステージのトリ。
一番の盛り上げどころだ。
春香は別の意味での大きなプレッシャーに押されてきていた。
そしていよいよ、最後の戦いが始まった……!!!
1.千早→<目が逢う瞬間(とき)>
☆審査員からの印象
○審査委員長:杉浦太陽
「さすがは“765プロおすすめ”の人材。歌唱力はさすがだね。」
○中田あすみ
「声の張りも悪くないし、なかなかいいんじゃないか?」
2.美希→<relations>
☆審査員からの印象
○スバル・ナカジマ(CV:斉藤千和)
「この人も上手…声の大きさも張りもいい具合…!」
○ウェンツ瑛士
「ヴィジュアルもなかなかいいし、ダンスも文句なしだな。」
3.貴音→<フタリの記憶>
☆審査員からの印象
○ティアナ・ランスター(CV:中原麻衣)
「切ないバラードソング…、それに合わせた完璧な歌唱力…、申し分ないわね。」
○千葉一磨
「まるで自分の心情を歌っているかのようだ……。」
4.雪歩→<Kosmos,Cosmos>
☆審査員からの印象
○高町なのは(CV:田村ゆかり)
「声の大きさにちょっと不安が残ると思うけど…、まぁ、問題なしかしら?」
○細田羅夢
「明るい表情と、テクノポップに合わせたユニークなダンス、見た目で言えば文句なしね。」
5.響→<迷走Mind>
☆審査員からの印象
○いとうせいこう
「アップテンポな曲調とクールなダンス。まるで特撮ヒーロー番組の主題歌にもなりそうな感じだ…。」
○フェイト・T・ハラオウン(CV:水樹奈々)
「とてもカッコよかった…。それにしても、今日の審査はやっぱり難しいわね……。」
さすがはIU決勝戦。
ここまで5人全員が持てる力を存分に発揮するほどの、高いパフォーマンスを披露していた。
甲乙の付けがたい名勝負になると、審査員も予め推測はしていたものの、ここまでレベルが高いとは思わなかった。
いよいよ残すは、あと一人――――。
舞台で着々と問題なく進行する中、舞台袖では一番最後に登場することになっている春香が、これまでで一番の緊張を見せていた。
「はわわ……もうすぐだ〜…。」
心臓がこれ以上ないくらいにドキドキしている。
自分の胸に手を当てなくても判るくらいに、鼓動が大きくなっているのを感じる。
「……緊張してる?」
そんな彼女の傍らに、空が現れた。
「あ、プロデューサーさん…、すみません…最後の最後で、こんな…。」
「あやまる必要ないわよ。でも、ここにきてそれじゃ……」
大本番、しかもこれが正真正銘最後のステージだ。
緊張しないはずがない。
彼女の心には、これまでにない巨大なプレッシャーがのしかかっているのだから…。
…とはいえ、いつまでもこれだと……。
「「はるるん☆」」
「?」
突然聴こえた聞きなれた愛称。
彼女のことをそれで呼ぶのは、彼女たちしかいない。
「あ、亜美ちゃん、真美ちゃん。」
「お?みんな来てくれたんだ!」
双子の亜美と真美を先頭に、これまで春香たちと共に戦ってきた仲間たち―――765プロのアイドルたちが全員集合していた。
「はるるん、なんだかむずかしい顔してるぞ?」
「すこしリラックスしたほうがいいよ!」
「そうですよ、堅苦しい表情では、歌もまともに歌えませんから。」
亜美と真美の笑顔と、あずさのおっとりとしながらも優しい言葉。
「ボクたちは今までだって、このプレッシャーと隣りあわせで戦ってきたんだよ!」
「そんなところで怖気づいてたら、どうにもならないよ!」
「プレッシャーなんか、あんたの自慢の歌で吹っ飛ばして、全力で、当たって砕けなさい!」
「くだけちゃダメだってば、伊織ちゃん!でも、春香ちゃん!今の春香ちゃんなら、きっと歌えるはずだよ!」
真、律子、伊織、やよいからの叱咤激励。
そして、先ほど歌い終えた千早と雪歩も合流してきた。
「春香、失敗を恐れないで。今まで私たちは、どんなときでもプロデューサーがいてくれて、そして何より、春香の傍には常に私たちがいるんだから…!」
「せめて、自分自身に負けないでください!自分の中にある恐怖から立ち直れないときは、私たちが支えてあげます!」
「だから、春香!」
『最後まで頑張って!!!!!!!!!』
「み、みんな……!!!」
そうだ…、自分には、今までこの数ヶ月間を共に戦ってきた仲間たち、そして、オーディションで落ちてしまった幾多のアイドルたちの思いもある。
そんな彼女たちの思いも一身に受けて、全力で歌い上げる……!
春香の迷いは晴れた。
最後まで、悔いを残さず歌い上げてみせる!
『さぁ、いよいよ残すはラスト一人!』
『765プロの天海春香さんの登場です!!』
司会の案内により、いよいよ春香の出番が来た。
「プロデューサーさん!みんな!」
――――行ってきます!!!!
『行ってらっしゃい!!!!』
全員に見送られ、春香はステージに立った。
6.春香→<I Want>
☆M-ist(ミスト)からの印象
○武田聖夜
「さっきの響さんに対抗してか、これもまたカッコいいダンス…!」
○島田 翼
「歌も旨いし、ビジュアルもいい感じなんじゃない!?」
○田中理来
「これって、もう誰が勝ってもおかしくないと思うよ!?」
こうして、全てのパフォーマンスが終了した……。
いよいよ最後の審査の時が来た……!
ステージ上には、歌い終えたアイドルたち6人が、そのときを静かに待つ。
「さぁ、いよいよこの瞬間がやってきてまいりました!アイドルアルティメイト・ファイナル、いよいよ最終投票です!」
「765プロ対961プロの全面対決ともなったこの決勝大会、果たして最強のトップアイドルの称号を掴むのは、どのアイドルなのでしょうか!?」
そして、このステージ、今回が最後と言うわけで、ステージの両端にはそれぞれ、961プロダクションの社長・黒井崇男、反対側には765プロの高木社長、プロデューサー・中川空、そして765プロのアイドルたちがそれぞれのイメージカラーのステージ衣装を身に着けた状態で駆けつけていた。
「それでは、まずは審査員の皆さんとM-istの投票から始めて行きたいと思います。」
・審査員とM-istの投票の持ち点は、一人3点(音符のマークが付けられた立方体のブロック)
・ファイナリストたちが後ろを向いている状態で、それぞれの前に設置されたテーブルの上に、順番に点数を横に並べていく
また、公平を喫するために、黒井社長と、765プロの関係者全員にも後ろを向いてもらい、誰が誰に投票したかを判らなくした。
「ではまず、M-istから。」
3人の手にそれぞれ、運命を握るミニブロックが手渡された。
「でも、これはかなりムズイんじゃね?」
「結構いい勝負だったと思うよ?」
「誰でもいいと思うんだけどなぁ……。」
全員が固唾を呑んで見守り、待つことしばし……。
「よし!」
「俺も決めた!」
聖夜と翼が決め、それぞれに票を投じる。
「う〜ん…。」
数秒遅れて、理来もようやく決め、票を静かに入れた。
「おい理来、お前、今2票入れた!?」
「うん、あの人の歌、凄く印象に残っちゃって…。」
なんと、理来は春香に2票を投じたのだ。
この差は大きいぞ…!
「なるほど…わかりました!」
「続いて、審査員の皆さん、投票をお願いします。」
審査員席で見守っていた人たちも投票を開始する。
一人ずつ、それぞれの前で間隔を取りつつ移動していたため、誰が何表入れたかはわからない……。
どうやらかなり判りづらくしたようだ。
そして―――。
「審査員の投票が終了しました!」
「ステージの皆さん、前を向いてください!」
全員が前を向いた。
「よしっ!」
票を見た瞬間、ガッツポーズを見せたのは―――。
合計で8票を獲得した響だった。
審査員の投票は、以下の通り。
響:8票
千早、美希:7票
春香、貴音:6票
雪歩:5票
この時点でもかなりの接戦!
それぞれの上下の差がわずか1票ずつ。
ほぼ横並びの状態だ……!
「審査員の皆さんの投票でも横ばい状態…!わずかながら961プロの響ちゃんのほうがやや上と言ったところでしょうか……。」
「しかし、全ての結末は会場の皆さんからの一般投票にかかっています!!」
・一般投票は一人につき1票のみ
・各自、それぞれの名前が書かれた、表裏の違う色画用紙が3枚セットで、それぞれ片方の端が透明のビニールテープで留められている状態で配られている
・その色画用紙を胸の前に出して、ステージに向けて見せて、誰に投票するかを決定する
(春香→赤、千早→青、雪歩→白、美希→黄緑、響→浅葱色、貴音→臙脂色)
・尚、一度出した色は変更不可能
・集計が終了するまで、色画用紙は決して下ろしてはいけない
泣いても笑っても、この投票で全てが決まる……!!!
「皆さん、よろしいですね?!それでは、一般投票を開始します!色画用紙をお出しください、どうぞ!!!」
BGMが流れ出したと共に、観客が一斉に色画用紙を提示する。
しかし、さすがに色がほとんどまちまちと言った様子。
集計スタッフも一苦労である。
…だが、今回のファイナリストは6名、ソレに対して観客は述べ5000人の大収容人数。
苦労しないはずがないか…。
そして、計算すること、およそ5分……。
「は〜い、計算が終了しました〜、下ろしていただいて結構で〜す、ご協力ありがとうございま〜す!」
マッキーの呼びかけにより、観客全員が色画用紙を下ろした。
これからいよいよ、票の集計だ。
「さぁ〜、もうまもなく全ての結果が揃うということで…!ドキドキしますね。」
「はい。さあ、この一般投票と先ほどの審査員投票を合計して、いよいよ、全ての結果が明らかになります!」
胸の高鳴りも、期待と不安が入り混じった影響により、ここからが最高潮…!
そして、さらに待つこと3分…。
「照英さん、マッキーさん!」
「「!?」」
「僕の下に、最終結果が届けられました!」
審査委員長の杉浦太陽の声により、全員が静まり返った。
ついにこの時が来た……!
「それでは、アイドルアルティメイト・ファイナル、総合優勝者の発表でございます!」
「杉浦太陽審査委員長、よろしくお願いします!」
--to be continued--
☆あとがき
色んな意味でのボルテージが最高潮……と言ったところで区切ってしまいました。
さぁ、いよいよ次の後編で最終決着が付きます!
さらに、思わぬ乱入者も登場!?果たしてそれは!!??