ここは、ディファ有明の放送席。

765プロの敏腕プロデューサーの中川空、本日はこちらで一仕事。

「真・・・、いよいよ本番・・・。頑張って!!」

その視線の先には、この日のために用意された特設リングがあった。











THE IDOLM@STER特別編
〜アイドルの格闘技〜

(原作:DaisukeP)



話は数日前、765プロ本社でのこと―――。

「私は、某大手女子プロ団体からスカウトのオファーを蹴って某大手お笑い養成所に進学してけど、卒業したら即765プロに移籍したの。」

(だから、お笑い部門を設けろとか言っていたのね・・・。)

空がこの765プロに在籍するに至るまでの話を小鳥に話していたとき、突然その小鳥から別の話が切り出された。

「そうそう、空さん・・・、さっきテレビ局からこんな企画案が・・・。」

「何々・・・、『芸能界格闘タッグ王座決定戦』・・・?」

小鳥から差し出されたのは、テレビ局の特番企画だった。

「来る、○月×日に格闘タッグ王座決定戦を開催します。近年衰退するプロレス界の発展を広げるために行います。・・・。」

大体眼を通してみると、それは空にとって、興味深い企画となる。

「あ〜確かに・・・、昔はビューティ・ペアやらあったけど・・・、最近の格闘界って、Kの国は、『自演乙』のおかげで人気は回復してきたけど・・・、プロレス団体に至っては有名団体以外は人気少なくなってきたから面白そうね・・・。」

「ちなみに、765プロから出るとしたら誰を推薦しますか?」

「そうね・・・、格闘技経験のある真と私ね。」

「なるほど・・・、真君は空手の有段者だし、私も悪くは無いと思いますが・・・。・・・?」

と、言ったところで小鳥は首をかしげた。

「空さんも出るんですか・・・?」

プロデューサー自らが出てくると言うのはちょっと異例であった。

「あれっ、話してなかったっけ?私さ、関根勤さんほどじゃないけど、プロレスの試合観戦したり、ジムで格闘技系のエクササイズして汗流したりと・・・、まぁいろいろとプロレス関連の事をやっていたの。」

実は空自身も格闘技の天才。

“格闘術のてんこ盛り”とも言える戦闘スタイルを習得しているのである。

(それで尋常じゃないプロレス関連の雑学の持ち主だったのね・・・。)

小鳥も彼女の話を聞き、納得する。

「しかも・・・、注目の選手がいるのよ・・・。」

「注目の選手?」

「出場予定リストにあるこれを見て。」

空が指差した名前は、格闘技界にとってはその名が知られている人気レスラーだった。

「あっ、『ドラゴンゲート』きっての人気レスラー『アンソニー・W・森』選手じゃないですか。どうして、注目の選手なんですか?」

「実はね・・・。」



















これは、空が当時大学生だったころ、後楽園ホールで『ドラゴンゲート』の興業を女友達3人で見に行った時だった・・・。

「全く・・・、私は全日・NOAH派だから他団体の選手知らないんだけど・・・。」

この日の試合に関して、ノア(イメージCV:伊藤静)は無関心の様子。

「なに言うてんの・・・。『ドラゴンゲート』には、マグナムにドラコン・キッドはカッコイイでしょ!!」

空が彼女に対して、『ドラゴンゲート』の選手に関して熱く語るも、ノアに対しては全く無意味だった様子・・・。

「私は、三沢・小橋が好きなの!!三沢・小橋選手が出た試合以外興味無いもん!!」

「何を〜!!」

「二人とも落ち着け!!」

危うく喧嘩になりかけたところを、佐藤 聖(CV:豊口めぐみ/『マリア様が見てる』より)が仲裁に入ったと言う。



















その話を聞いた小鳥は、ちょっと意外そうに目を軽く見開いた。

「そんな事が合ったんですか・・・。」

「まぁ、アイツも『ドラゴンゲート』見てから他団体の試合チェックしたりしてるんだよね・・・。」

「仲良いんですね・・・。」

どうやら様子からして、その日は大いに盛り上がった様子だ。

「おはよ〜ございま〜す!!」

と、そこへ真が到着。

「おはよ〜、真!!」

「プロデューサー、どうかしたんですか?」

「ふふっ、コレを見て・・・。」

笑みを浮かべた空から、企画概要の書類を受け取った真は、早速それに眼を通す…。

「なになに・・・、『芸能界格闘タッグ王座決定戦』・・・?」

「そっ。今回、真には『ドラゴンゲート』のアンソニー・W・森選手とタッグを組んで1試合させてみたいって思うんだけど、どう?」

「へえ…面白そうですね…。」

アイドルとして活動する前、空手の黒帯有段者と言う実績を持っている真にとって、この企画に興味津々。

少し考えた後、真は決意を固めた。

「プロデューサー、僕・・・、出たいです!!」

「んじゃあ、決まり!!早速、今日から本番までに、真の空手道場で立ち技の強化と、私の知り合いにプロレスのコーチがいるから、その人に寝技と関節技を教わるわよ!!」

「はい!」



















移動中の車内、空は今回の試合に関する注意事項を告げた。

「真、始めに言っとくけど・・・、今回の試合では頭部への攻撃が有るわよ!!」

「えぇっ!?」

さすがに想定外だったのか、真も今回は驚かざるを得ない。

「真のやっていた空手の流派じゃあちょっと危ないけど、セコンドにみんながつくから、お互い頑張りましょ。」

「分かりました・・・。」

思っていたのとは違う試合になりそうという状況に、真は少しばかり不安を覚えていた・・・。



















たどりついたのは、横浜市内にある某女子プロレス団体の道場。

そこに居たのは――――。

「ノア〜!!」

「空!!久しぶりだな。」

なんと空のかつての学友・ノアだった。

「実は・・・、ちょっとお願いが・・・。」





空は、今回のテレビ局の特番『芸能界格闘タッグ王座決定戦』の概要を伝えた・・・・・・。





「なるほど・・・、分かったわ。友人の頼みなら協力するわ。」

「「ありがとうございます!!」」

「じゃあ、早速ロードワークから始めようか。」

「「ハイッ!!」」

それから空と真は、ノアが所属している女子プロレス団体の道場でプロレスの基礎を、真が通っていた空手道場で立ち技を学んだ。











その後に続いたトレーニングは、かなりハードなものだった。

「デャアァ!!」

「甘い!!」


スパァン!!

真が技を仕掛けてくるも、ノアはそれを軽々と払いのけ、カウンター攻撃。

あっさりとダウンしてしまった。

「ま・・・、参りました。」

「じゃあ、罰ゲームのスクワットを30回ね。」

「ハイッ・・・!!」











ノアが考えたトレーニングはこうだ。



・カウンターに耐えたらノアがスクワット30回

・逆にカウンター攻撃を食らったら真がスクワットを30回

・投げ技を成功したらノアが腕立て伏せ30回

・逆に投げ技が失敗したら真が腕立て伏せ30回




ちなみに、真の方が腕立て伏せとスクワットが多い。

「プロデューサー、終わりましたよ。」

「今度はちょっと筋トレしよっか?」

「ハイッ!!」

こうして、三人によるプロレス付けのレッスンは試合前日まで続いた・・・。























そして、いよいよ試合前日、765プロ本社。

「今日はゆっくり休んで明日の為に頑張りましょ!!」

「ハイッ、お疲れさまでした!!」

ここまで二人は、ノアの指導の下、二人三脚でメキメキと腕を挙げていった。

これだけの実力を持てば、相手に引けと取らないはずだ。

「あっ、そうだ、真!!」

「何ですか、プロデューサー?」

と、ここでもう一つ大事なことを忘れていた。

明日の試合用の衣装だけど・・・、どうする?」

「う〜ん…、そういうのは分からないから、プロデューサーにお任せしますよ。」

「そう・・・。」































そして迎えた本番当日、二人は会場にたどり着いた。

「なんだ・・・、会場ってディファ有明か・・・。てっきり、後楽園ホールかと思ったわ・・・。」

「プロデューサー、早く入りましょうよ!!」

「分かったわ・・・。」











ノアと合流し、選手控え室に入った二人は、今回の試合の打ち合わせを開始した。

「今回の対戦相手って誰ですか?」

「え〜っと・・・、『ハッスル』のレイザーラモンRGと『ドラゴンゲート』のハリウッドストーカー市川のタッグよ。真君の実力なら・・・、雑魚クラスね。」

「雑魚クラスですか・・・?」

ノアの口から発せられた意外な言葉に、眼を丸くする真だったが・・・。

「うん、共に超協力なレスラー相手にたくさん戦ってるけど、RGは何回かはメイン組んでるけど・・・、年数回勝てるかで、市っちゃんに至っては年1回勝てるかってとこかしら・・・。」

「なるほど・・・。」

つまり、二人の対戦成績はあまり芳しくない、と言うことなのだろうか・・・。

「ちなみに、市川はカンチョー攻撃に注意してね。」

「カンチョーって小学生じゃあるまいし・・・。」

確かに子供じみた攻撃手段に聞こえるかもしれないが・・・。

「これが3日位は痛いのよ・・・。後、前からもカンチョー攻撃してくる可能性が有るから気をつけて・・・。」

「前から・・・?」

「えぇ・・・。一言で説明すれば・・・、『マンチョー攻撃』かしら・・・。」

「・・・エグイですね。」

ちょっとこれは注意したほうがよさそうだ…。

「じゃあ、RGは?」

「アイツはホットパンツを脱いだ時に出てくる赤い褌によるヒップアタックね。あれ、けっこう効くわよ〜!!」

「効くって・・・?」

「一言で言えば、『臭いがキツイ!!』かしら・・・。」

(くさいんだ・・・。)




―――コンコン




打ち合わせが続く中、ドアを叩く音が。

「は〜い。」

開いた扉から顔を出したのは、同じく765プロ所属のアイドル兼プロデューサー候補の秋月律子だ。

「プロデューサー、真のタッグパートナーが挨拶に来ましたよ。」

「どうぞ〜!!」

「おはようございます。」

部屋に入ってきた、いかにもカッコいい第1印象のこの男が、今回のパートナーだ。

「アンソニー選手、良く来てくれたわね!!真、紹介するわ。彼が今日のタッグパートナーである、アンソニー・W・森選手よ。」

「今日はよろしくお願いしますね。」

「よろしく・・・。」

“リングの上の王子様”と表現するべきだろうか、その意外なかっこよさに、真も少し照れ顔だった様子。

















大勢の観客で一杯になりつつある会場。

いよいよゴング。

「赤コーナーより、菊地真選手、アンソニー・W・森選手の入場です。」

BGM『eleganc heart』に乗せて、アンソニーと真だ堂々の入場。

ちなみに、今回の真の衣装は、アンソニー選手の衣装を女性用にアレンジしたタイプである。

「せゃあ〜!!」

「行きますよ〜!」









「青コーナーより、RG選手、ハリウッドストーカー市川の入場です。」

続いて、『ウィリアム・テル序曲』をBGMに、対戦相手のRGと市川が登場。









レフェリーがリングに上がり、準備が整った。



「ファイトッ!!」



―――カーン!!


試合は一方的な展開だった・・・。

アンソニーの『エレガント・マジック』がRGにクリーンヒットし、真の連続正拳突きが市川のボディを吹っ飛ばしたが・・・、事件は試合開始10分後に起こった・・・。

























「こうなりゃ・・・、カンチョー!!」

―――ブスリッ

「痛った〜い!!」


警戒しておくべきだった攻撃をまともに食らってしまった。

(あっちゃ〜、まともにカンチョー食らっちゃったし・・・。)

「アジャ・コングには出来なかった・・・、必殺・・・。『マンチョー』!

―――ブスリッ

間髪入れずの連続攻撃に、さすがの真も思わずリングサイドのローブにもたれかかった。

「痛いっ・・・。痛いよ〜!!」

「効いたか・・・?」







「・・・な〜んてね!!」







「へっ・・・?」







「セイッ!!」





―――ズドンッ!!








先ほどの攻撃が成功した影響で油断していた市川の隙をつき、真がカウンターも込めた渾身の反撃!

そして、その技のスタイルに、ノアと空は見覚えがあった。

「空・・・、あれってもしかして、小橋の・・・。」

「ええ・・・、構えからして・・・まさに『青春の一撃』よ・・・。」

真の『青春の一撃』をまともに喰らった市川は、そのままダウン。

「1、2、3!!」

―――カンカンカンカーン!!

「只今の勝負は、アンソニー・菊地組の勝利です!!」


観客の大声援と共に、見事な勝利を収めた真とアンソニーだった。

























その後の選手控え室。

「へへっ、やっり〜!!」

「市川のカンチョー攻撃に耐えるなんて・・・、真もやるわね・・・。」

空も今回の成績には感心したのだが・・・。

「実は・・・。」

・・・その後の言葉が出てこない。

状況から察するに・・・・・・。

「なるほど・・・、やっぱり痛かったんだ・・・。」



--THE END--



あとがきと言う名のフリートーク(DaisukeP[以下:D]、中川空[以下:空])
空「ねぇ・・・、コレさ・・・。最初は『三沢選手の追悼目的』じゃなかったの?」
 D「確かに、最初は『三沢選手』の追悼目的は有ったけど・・・、
  自分『NOAH』の試合あんまり見たこと無いし・・・。」
空「1回見てみろ!!」
 D「ハイッ・・・。」

編集者・コースケの後書き

DaisukePさんから頂きました、アイドルマスターSS第2弾!
今回はプロレスネタ+『マリみて』とのクロスと言うことでしたけれども、いかがでしたでしょうか?
実はぶっちゃけた話、自分自身はプロレスは見ないほうなので、何とも言えないのですけれども、Youtubeで三沢選手死亡の関連動画を見たとき、自分としても呆然としてしまいました。
まさか試合中に死亡するなんて思ってもいませんでしたからね…。
この場をお借りしまして、三沢選手のご冥福をお祈りしたいと思います……。

DaisukePさん、今回も面白い小説の投稿、ありがとうございました!







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